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困ってるひと

この本については「ほぼ日」の糸井さんがオススメといっているのを見かけていて知っている程度でした。図書館ですいかりんさんに会った時に「これは読みました?」と教えてもらって、ああそういえばと借りてきたのでした。

ひょうひょうとした語り口でライトノベルのように書かれていますが、内容はかなり壮絶です。
25歳という若さで「筋膜炎脂肪織炎症候群」と「皮膚筋炎」の併発という難病にかかってしまった著者。当時は大学院生としてビルマ難民の支援に関わる活動をしていたのに、その調査先のタイから息も絶え絶えに帰国して病院巡りが1年、ようやく診断がついてもステロイドで症状を和らげる以外にこれといった治療法はないのです。

その症状は、24時間365日インフルエンザのような全身の痛みとだるさというもの。生きながら、筋肉や脂肪組織が勝手に炎症=熱を持ち、潰瘍を起こし、石化していくというのですから、本当につらいでしょう。痛いでしょう。

かつて「難民支援」をしようとしていた本人が病気という「難」にとりこまれ、日常生活も出来なくなってみて初めて、日本の”利用するには非常に手間のかかる福祉医療システム”に出会います。健康に過ごしている人はそうで会う機会のないこれをモンスターと呼び、これと戦うことで生きるのに必要な手段をまさに身を削って手に入れていくような日々が書かれています。

彼女の場合、学生の一人暮らし中に発病し、両親は福島で共働き、しかも入院した病院は都内某所ということで、さらにハードルは上がったようです。
最初のうちは「何かできることがあったら言ってね」とお見舞いや手伝いに来てくれた友人達とも疎遠となったり、病院内で出来たボーイフレンドに関連して担当の先生との信頼が切れてしまったりと、長期入院せざるを得ない故のさらなる「難」もプラスされていきます。

本の最後では、9ヶ月にわたって入院治療を受けていた病院をでて、近所に借りたアパートで介護福祉の世話を受けながら、通院治療に切り替えるという選択をします。
健康な人ならば住民票の移動だけで済む引っ越しも、障害者手帳や、特定疾患認定など様々な書類をすべて移籍しなければならないそうで、それを歩くことすら大変な難病患者がやらなくてはならない。
しかも、一般の市役所の窓口と、それら介護福祉の窓口は建物が別だったりするという、困難つき。

本当に大変そうでしたが、とりあえず現在も小康状態を保って、自分で出来る範囲のフィールドワークをしているそうなので少しだけ安心しました。

本の中にも書かれていましたが、「こんなに問題点が多いのに、なぜ改善されないのか」=「病気の人は自分の手続きを終えるだけで精一杯。次の人のために声を上げる余裕など無い」のだそうです。
そういう意味では、この本で一人の難病患者の目を通してだけでもたくさんの問題点が挙げられているという、貴重な作品なのだと思います。
by daysofWLA | 2012-04-08 15:50 | 読んだもの | Comments(2)
Commented by すいかりん at 2012-06-04 14:51 x
あら~、この本のことブログに書いてくださったのですね。嬉しい!どうしてでしょう、すっかり見逃していました。。。。。

お勧めの本を読んでいただけると、本当に嬉しいです!最近、このおせっかい癖がどんどん出てきて、利用者の方に本のことを熱く語り、後で深く反省。。。ということが。ただのリトル東京のおせっかいなおばちゃんになってますね~。
Commented by daysofWLA at 2012-06-05 03:12
すいかりんさん、読んでみて色々考えさせられた本でした。
お勧めいただけると、読んだことのない作家さんを知るきっかけになるので私は嬉しいですよ。本の話を他の人から聞く機会もあまりないですし。
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